在日台湾同郷会から
「広辞苑」第7版での台湾に関する誤記述訂正のお願い

 貴社が発行した「広辞苑」第6版に台湾に関する項目に誤りがありますので、それについて説明します。

 その「台湾」の項目にある「1945年日本の敗戦によって中国に復帰し、49年国民党政権がここに移った」の記述は事実に反します。

 1952年に締結されたサンフランシスコ講和条約(Treaty of peace with Japan, 昭和27年条約第5号)の第2条(b)に日本は台湾・澎湖諸島の権利・権限及び請求権を放棄すると明記されています。日本は台湾を放棄したが、決して当時の中華民国に返還・復帰したものではありません。

 1945年連合軍マッカーサー元帥の命令第1号に基づいて、中華民国が台湾を接収した。その後、1949年共産党軍に追われて国民党政権が台湾へ亡命し、1952年サンフランシスコ講和条約締結後も居座り続けた。国際法に照らすと、台湾が中華民国に復帰したのではなく、台湾が中華民国に不法占領されたのが事実であります。

 そうしてもう一つの誤りは、「日中共同声明」の項目にある「日本は中華人民共和国を唯一の正統政府と認め、台湾がこれに帰属することを実質的に認め・・」という説明です。

 外務省のHPに載っている「日本国政府と中華人民共和国政府の共同声明」の(3)にこう書いています。「(3)中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する。」

 そうして日中共同声明を調印した大平正芳外相がこう言った。「台湾はサンフランシスコ条約で放棄した。日本として放棄したものはだれだれのものと言えない立場である。」(毎日新聞1972年10月7日)

 したがって日本政府は中華人民共和国の「台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部」の立場・主張を承認していません。また日本政府が台湾を中華人民共和国に帰属することを実質的に認める記述は明らかに事実に反します。

 さらに中華人民共和国の項目の地図に台湾が中華人民共和国の一省と記されている。

 このような地図は中華人民共和国の歪曲した「台湾は中国の不可分の領土」の覇権主義的な主張をそのまま受け入れた形であります。しかし台湾は中華人民共和国に統治されたことは一度なかったのが歴史の事実であります。したがってこの地図は明らかに事実に反しています。

 台湾に関する三箇所は、日本の国民を惑わす誤った記述であるのみならず、中国の台湾への領土の野心を正当化する危険に満ちた間違いであると指摘せざるを得ません。

 そこで貴社に置かれましては、来年に発行される予定の第7版で是非この三箇所を訂正していただければ幸いに存じます。

 2017年11月20日

在日台湾同郷会会長 王 紹英


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首頁: http://taioan.web.fc2.com/   

ホームページ担当者:   作成日 2017/11/25 (最終更新日 2017/11/25)



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